表面実装型ヒューズ セルフコントロールプロテクターのヒューズエレメントを鉛フリー化する技術を開発、特許を取得

新製品

2018.09.25

デクセリアルズ株式会社(代表取締役社長 一ノ瀬 隆、東京都品川区)は、リチウムイオンバッテリーの2次保護素子である、表面実装型ヒューズ セルフコントロールプロテクター(SCP)のヒューズエレメントを鉛フリー※1化する技術を開発し、特許を取得しました。さらにRoHS指令の適用除外の鉛※2を含むセラミック回路基板の材料構成を見直すことで、SCP全体の鉛フリー化を実現しました。


当社のSCPは、リチウムイオンバッテリーの充放電を制御している1次保護が正しく機能せずに過電流・過充電が発生した際、ヒューズエレメントを溶断させて回路を遮断する2次保護用のヒューズです。1994年の上市以来、ノートPCをはじめ、スマートフォン、電動工具、コードレスクリーナー、電動バイクなど、リチウムイオンバッテリーを使用する機器に幅広く採用されています。

SCPは部品実装効率に優れるリフローはんだ付けに対応するため、内部のヒューズエレメントは230~260℃の熱がかかっても溶けない融点を持つ必要があります。一方で、リチウムイオンバッテリーが過電流・過充電に陥った際には、すみやかにヒューズエレメントを溶断するため、260℃以上のなるべく低い融点を持つ必要もあります。この2つの要求を満たすため、従来製品では、RoHS指令において使用制限の適用除外となっている鉛を含有する高融点はんだ※2を主成分としていました。これまでは高融点はんだに近い融点と流動性を兼ね備える合金がないため、鉛フリー化は困難でした。しかし、当社はこれまで、20年以上にわたって、製品の高性能化や小型化などをすすめ、材料の技術を蓄積してきました。今回、鉛の環境への影響と今後の規制強化の可能性を考慮し、鉛を使わないヒューズエレメントの開発に成功し、特許を取得しました。

このたび当社が開発した鉛フリーのヒューズエレメントは、融点217℃の錫を主成分とする合金の周りを、融点962℃の銀でめっきしたものです。リフローはんだ付け時は形状を保持し、反対に過電流や過充電が発生して保護動作状態になると、リフローはんだ付け以上に高い温度がかかり、内部の錫合金が液体化します。さらに固体が液体に溶ける溶解現象※3が発生して銀が液体化した錫合金に溶けることで、銀単独の融点より大幅に低い温度でヒューズエレメント全体を溶断させることができ、鉛を使わずに従来のヒューズと同等の機能を実現しています。

当社はこれに加えて、セラミック回路基板の材料構成を見直すことで、SCP全体の鉛フリー化を実現しました。なお、当該SCPは既に大手スマートフォンメーカーに採用されています。

  • ※1欧州の有害物質の使用制限であるRoHS指令では鉛含有量1,000ppm以下の状態を鉛フリーと定義しています。
  • ※2鉛含有率が重量で85%以上の高融点はんだ、電気電子部品に使用されるガラス・セラミック・鉛の複合材料などはRoHS指令適用除外になっています。
  • ※3溶解現象:液体中に他の物質が溶け込んで均一な相になる現象(JIS K 0211:2013)